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【New Eden Headline】5・『ステラートランスミューターの起動、星間社会の反応』

「YC124年、10月2日。 あの日、私達は、いえ、ニューエデンは驚愕、怒り、その他あらゆるネガティブな感情に包まれていました。 よく覚えていますわよね、ミスター?」
「そうですな… まさにアマーの傲慢さここに極まれり、という事態、でありましたな。」

全てのミンマター人にとっての、悪夢のような出来事だったのは間違いない。
あれはさすがに、報道メディアとしては絶対中立を掲げる私も、New Eden Headlineとして最大限の非難を発表する選択をしたほどだった。

「義勇軍ウォーゾーン、ターナーシステムにおけるステラートランスミューターの起動。 このアマーの…蛮行、に、星間社会は先ほども言ったように、怒りを持って迎えました。 この騒動に、カルダリを含めた、他3つ全ての主要国家が懸念や批判を表明したのです。 ミンマターのCONCORDインナーサークル代表、ケイタン・ユン大使などはアマーのことを『ギャングと海賊が経営するテロ国家』と言って強烈に非難したりしましたし、同じくガレンテ代表のデヴァン・マレート大使もこのステラートランスミューター実証実験を無謀かつ完全に違法であり、何十億もの人々を危機に晒している、と非難していました。」
「…かつての侵略戦争のことを考えれば当然ですな。 シオンハート女史、もしかすると、貴女のほうがそこは強いのではないですかな?」

…よく分かっているな。

「…ふむ。 まぁ、それもそうですわね。 確かに、我らがカルダリは、かの戦争で最も多くのシステムを失いました。 まぁ、それもあって、カルダリでは元々EDENCOM批判の論調は強かったのですわ。 カルダリが、アソウノンを巡って真っ先にCONCORD、EDENCOMへ事実上の敵意を向けたのも、そういう側面があったのは事実でしょう。」
「EDENCOM…ニューエデン共同防衛構想の至上たる目標、ニューエデンの防衛を果たせなかったのであれば、そうなるのも仕方ありますまい。」
「ですわね、ミスター。 カルダリも決して少ないはない額を防衛基金に拠出していましたから。 さて、そのカルダリもこの危機にはサラキ議長や、各CEOが懸念を表明していました。 最もアマー寄りの論調と言えたライダイのイシャノヤCEOも、アマーが主張したCONCORD緊急義勇兵戦争権限法の資源権解釈そのものは認めつつも、ステラートランスミューターについてはコメントを控えていたほどですわ。」
「…まぁ、カルダリ企業と言えば、義勇軍ウォーゾーンで支配したガレンテシステムにも入植しているものですしな。 そういう利権を認めることは都合が良かったのでしょう。」
「それは認めますわ。 そこは…えぇ、まぁ、先に話した通り、歴史的なものもありますから。」

微妙にコメントしづらい。
まぁいいんだが…

「…さて、それはそうと、同日にあったニュースといえば、インターバスの役員会議の騒動ですわね。」
「インターバス。 主要4大国家の平和協調の象徴、でしたな。 各国が出資し、絶対中立の名の下に、全てのニューエデン市民に輸送、配送サービスを公平に提供することが使命である、と。」
「ですわ、ミスター。 そのインターバスの臨時の役員会議がオーラフェーⅣ軌道上のインターバスのステーションで開催されたのですが、途中で主要各国の代表者が退席してしまい、何も決まらずに大混乱のまま幕を下ろしてしまった、という騒動でした。 この役員会議はターナーのステラートランスミューターの起動やエグマ、バードのステラートランスミューターも起動が近いことを受けてのものだっただけに、余計に各国の対立が強調された結果と言えるでしょう。」
「それぞれがそれぞれの利益に対立しているようでは、もちろん、会議など纏まるはずもありませんな。」
「ですわね、ミスター。 しかしながら、インターバスのCEO、ハウカッカ・プカラ氏はその後の記者会見で、インターバスは各国が妥協点を見出し、社会にとって必要不可欠なインターバスのサービスを継続できると確信している、との自信を表明しました。 もっとも、インターバスの幹部も、この言葉が将来の不安を拭い去ることができるものではない、ということは理解していたようでしたけれどもね。」
「言葉だけでは如何とも、というわけですな。」
「その通りですわ、ミスター。 それよりも多くの事が起きていましたから。 さて、それから1週間ほど時間が進みます。 次にニューエデンを駆け巡った情報は、まさに青天の霹靂と言うべきものでした。」
「ええと…その次は… 何でしたかな、シオンハート女史?」
「10月11日。 その日の早朝、ユーライⅢから衝撃的なニュースが報じられました。 先ほどから話に出ているインターバスCEO、ハウカッカ・プカラ氏の急逝です。」
「あぁ、ありましたな…」
「私もあれは非常に驚きましたわ。 ほんの1週間ほど前に記者会見などを行っていたばかりの氏が、77歳というあまりの若さで突然亡くなったと報じられたのですから。 氏はあの日の早朝、ユーライⅢの邸宅で就寝中に致命的な心肺停止状態に陥ったと見られており、使用人が氏に声をかけた時点で、既に亡くなっていた、ということだそうです。 ミスター、氏が実はミンマターにとっての英雄のようなものだというのはご存じでしょうか?」
「ええと… 聞いたことはありますな。 一応、ご説明願えますかな?」
「いいでしょう。 まずは氏についておさらいしましょう。 プカラ氏はYC72年のインターバス創設以来のCEOでした。 当時の彼はCONCORDの若き管理官でしたが、公共サービスの提供といったことへの圧倒的な熱意を買われ、CONCORDが主導したインターバス設立のリーダーへと選ばれたのです。 氏の活躍もあり、今やインターバスはニューエデンになくてはならない、根幹サービスとなっています。 プカラ氏と共にインターバスを動かしてきた人々は、氏が『国家や信条で区別することなく、ニューエデン全ての人々に輸送サービスを提供する』というインターバスの命題に人生を尽くしたことを賞賛していましたわね。 氏にとってこの命題、あるいは使命は人道的なものでもありました。 それが先のミンマターにとっての英雄のようなもの、という話なのですが、有名なのはYC110年、当時のアマー女帝のジャミル1世の奴隷解放宣言ですわね。 氏は、社内からの強い反対を押しきり、アマー領内のミンマター人に無料での移動を提供するように手配したのです。」
「あぁ、そうでしたな、思い出しましたぞ。」

とにかく、あのプカラという人間は何よりも公平、中立を掲げていた。
そういう意味では、私も彼のことは尊敬している。

「主要各国もこの突然の訃報に、哀悼の意を表明しました。 ミンマターはサンマター・マレアツ・シャコール自ら、『ニューエデンの全ての人々は自由の忠実、そして継続的な守護者を失った。 プカラ氏は人の弱みにつけこもうとせず、平等を貫いた。 全てのマタリが、彼のことを記憶に刻むだろう』とコメントし、ガレンテのアガード大統領も、氏を『輸送業界における伝説』と呼び、『より開かれたニューエデンを目指す彼の情熱が人々にインスピレーションを与えていた』と賞賛。 カルダリも代表取締役委員会として共同声明を発表し、共同声明として『軽率な行動が目立つ時代に堅実な手腕を発揮した』と称え、アマーも控えめながらも女帝カティズ1世が『信念を持ち、その信念の通りに生涯を送った人物』と評価したほどでした。 この各国が対立する時代、情勢においても、プカラ氏は全てのニューエデン市民が称えるほどの功績を残していたのです。」
「…私もこのような事業をしておりますから分かりますが、彼の…偉業により、ニューエデンの経済は大きく発展したものですからな。 モノは誰かが運ばなければ勝手に動くことはない。 その単純な事実において、インターバスが成したことはあまりにも大きい。 事実、彼を失ったことは… 様々な面で、本当に衝撃的でしたな。」

ミンマター人として、商人として、並々ならぬ感情があるのは事実だろうな。
カルダリ人である私もそれは同じことだ。
経済の発展において、彼が成したことは文字通り、偉業だろう。
インターバスがなければ、今日この日のニューエデンは違う姿になっていたに違いない。

「さて、そのインターバスですが、役員会はこの訃報を受け、後継者となる新CEOを発表しました。 プカラ氏の下で、執行取締役を務めていたアレクサンダー・デュカス氏です。 プカラ氏の長男にしてインターバス役員会のメンバーでもあるイルマリ・プカラ氏は役員会を取りまとめ、デュカス氏に信任票を投じました。 デュカス氏はインターバスにおいては先進的な見方をすることで知られており、期待の若手とも言われていました。 デュカス氏は前任であったハウカッカ・プカラ氏を悼んだ上で、『インターバスの堅実な船長として、ハウカッカ・プカラほどの適任者はいませんでした。 彼は航路を外れることなく、50年以上もインターバスを導いてきたのです。 インターバスの使命に対する彼の献身は疑いようもありませんし、彼のような人物は二度と現れないでしょう。』と賞賛しました。」
「ふむ。 期待の若手、と。」
「ですわね。 デュカス氏は更にインターバスの将来について、冷静な判断が勝利を収め、私達の大切なクラスターに平和が訪れることを願っている、しかし、現実はどうなろうとも、インターバスは扉を閉ざさず、人々の移動の自由、そして新しいアイデアが紛争によって妨げられることはないし、インターバスはこれからも移動の自由を提供し続ける、と自信に満ちた声名を発表していました。 インターバスがどのように今後運営されていくのか、その交渉中にそのキーパーソンだったプカラ氏が急逝し、インターバスの存続が危ぶまれる中、それでもデュカス氏はインターバスの将来は明るいと信じていたのです。」
「ある意味、プカラ氏とはまた別の、それでいて似た信念を持っていたのですな。」
「そういうことなのでしょうね、ミスター。 さて、話は更に翌日、10月12日へ移りますわ。 9月の終わり頃、カルダリとガレンテがアソウノンシステムにスターゲートの建造を開始していましたが、そのうち、カルダリ側のスターゲートがついに完成、起動まで秒読みだと報じられたのです。 最前線でありながらも、僅か2週間とかからず新スターゲートが完成したことにサラキ議長は甚く感激し、『我がカルダリの海軍、そして義勇兵達が、彼らが誇る軍事、産業技術を組み合わせた時にどれほどのことを成し遂げられるかを証明した偉業』だと賞賛し、プラシッドリージョンにおける特別作戦を指揮する海軍士官のヘイカ・トリゴ准将の昇進を発表したのです。 昇進の発表されたトリゴ氏ですが、彼女は准将から一気に昇進し、Executive General…私は総督、と翻訳していますけれども、まぁ、そういったまさに大出世を果たし、それを成し遂げた義勇兵達を大げさなまでに褒め称えていたということです。 トリゴ…総督は、続けてアソウノンシステムやサースルドコンステレーション全域に散らばるトリグラヴィアン技術データを今後は回収することが目標だ、とも発表していました。」
「余程の偉業だと認識していたのでしょうな、代表取締役委員会も。」
「事実、戦場も戦場、その真っ只中での過酷な建造作業だったわけですから。 ガレンテに大きく差を開けての完成ともなれば、それは素直に激賞されるべきだったのでしょう。 …それと、同日の報道で、アマーとミンマターのウォーゾーンでの動きがありました。 ミンマター義勇軍が3週間以上に渡る大規模攻勢の果てにバードシステムを攻略、同システムのステラートランスミューターを奪取したのです。 サンマター・マレアツ・シャコールやカンス・フィルミア将軍も義勇兵、部族解放軍の活躍を賞賛し、ミンマター各地では義勇軍攻勢の成功やステラートランスミューターの確保が歓喜を持って迎えられていました。 しかし、このステラートランスミューターを巡る戦いの齎す破滅的な結末の可能性に、各国では懸念が囁かれていました。 …私が特に注目していたのは、ガレンテ政界における保守派や、ハト派から上げられていた、セイリン大災害、あるいはトリグラヴィアン侵略戦争時のような恒星災害の発生の危惧、というものでした。」
「ふむ。 セイリン大災害とは初耳ですな。 一体どのような事だったのでしょう?」
「では、再び少々脱線しますが、それについてもお話しましょうか。 時はYC111年、3月10日。 今から14年前のことですわ…」

 

 

※当記事は橘 雪(たちばな ゆき)/El Shionheart氏による寄稿記事になります。

 

ありがとうございました!!

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