Spicy World

【Spicy World】円卓十二宝剣-1 【オリジナル小説】

どうも、書い人(かいと)です。

直球のファンタジー小説を書き始めました。

以前はカクヨムに載せていたのですが、自分のメディアで勝手気まま・自由に書こう、と思って、Wordのテキストデータからコピペしたものが今作になります^^

闇騎士、ナイトメア

戦場を体長一〇メートルに迫ろうかという、赤褐色の軍用火竜が駆け、飛翔し、突貫する。
鋼のような鱗(うろこ)、切れ味すら予感できるような鋭い翼に、獰猛(どうもう)な牙の生えた顎(あご)。
そしてその口からは、いつでも灼熱の吐息が放たれるのだ。
それは、飛燕(ひえん)の如く。
一匹の火竜が敵騎士団の隊列、その先頭、闇夜のような鎧を纏(まと)う騎士へと、距離を急激に詰めて目前まで迫る。
あとは、噛み砕くか、周囲まるごと焼き尽くすか、それとも強靭な尾の一撃を見舞うか、とでも、という必死の瞬間だった。
しかし、攻撃的な火竜の動きがそこでほぼ、完全に止まった。見えない糸でがんじがらめになったように、ほぼ行動が制限されていた。
火竜が思考を切り替え、目前の黒の騎士に向けて炎を放つ少し前に、
「恨みはないが、敵は排除するのみ」
とその闇の騎士が声を放った。
火竜を拘束している見えない糸たち、その全てが極めて鋭い刃となり、火竜その鱗と肉、そして骨に内臓を刻んでいく。
一瞬の痛みと共に、悲鳴を出すこともなく火竜は、賭博に使われる賽(さい)のように、全身を細かく刻まれて絶命した。
その火竜を殺したのが闇夜の鎧を纏う騎士――闇騎士(やみきし)・ナイトメア。
彼が持つ、円卓十二宝剣が一振り、『暗剣(あんけん)、インビジブル・シェイド』は圧倒的な武力の象徴の一つだ。
ナイトメアのような騎士団長が持つ円卓十二宝剣は、騎士団配下の騎士たちの魔力を一部ずつ共有して一箇所に集め、一二人の円卓の騎士たちが強大な魔法を、宝剣を通して振るうものになる。
見た目――その拵(こしら)えに加え研究製作、及び運用の歴史だけでも、国家が管理すべき宝物(ほうもつ)、国宝。しかし、それをさらに上回る実用性が、円卓十二宝剣にはあった。

数年ほど前に、ナイトメアは騎士としては高齢に差し掛かった闇騎士、その後任として任命された。試験運用時代を除けば、二代目闇騎士の拝命であった。
ナイトメア本人のその性格はやや暗いとされ、絶対的に人間的な魅力(カリスマ)などは今のところ、ない。
だがしかし、彼は先天的な勇気・意志の強さ、運動能力、魔力、頭脳に総合的に秀でていた。
騎士になるべくしてなった人物、理想的な騎士像・完成形の一種の人物といえるだろう。
やや面倒かつ、複雑な運用の方法が必要な魔剣、宝剣『インビジブル・シェイド』の使い手となるには相応しく、当時の円卓議会ではほぼ満場一致にて、彼への宝剣の下賜(かし)が議決されたのだ。
円卓十二騎士の一卓に加わるというのは決断力に秀でた彼ですら、当初は困惑するほどの大任であったが、他の円卓の騎士の助言もあって今の地位を確固たるものにしつつある。

円卓十二宝剣は、魔力が込められた特殊な書面(これ自体が、一種の魔導具となる)による十二個の契約と、それぞれの契約受諾者に対応する十二振りの宝剣が契約主として割り当てられている。
簡単に言えば、いわゆる契約上の甲(こう)と乙(おつ)であり、主従関係である。
技術的には、契約した部下(メンバー)、騎士団員から一部の魔力を吸い出し、各宝剣の莫大な魔力源とするものになる。
希少な魔鉱石と、さらに希少となる加工技術。そして、開発者の献身的な研究と熱意により、宝剣は戦場で猛威を振るっている。
無論、古くから契約魔法というものは、存在した。
霊的な活動力(エネルギー)と干渉し、利用する『魔法』。
太古から素養のある人間は空間から炎や氷、雷などを生み出し、竜(ドラゴン)に至っては、その口などから猛火の類(たぐい)を放つことができた。
契約魔法の発祥は、人間と深い交流があった、高い知能と言語、大変に魔法に秀でた魔法生物が、『約束』と称して誓いの魔法を立てたことが由来とされる。
「お互いに、協力し合おう。約束を違えば、縁が切れてしまうぞ」、といったかわいいいものだったという口伝が、最終的には文書として記録され、残っている。
現代において実用化された契約魔法、その最たるものの一つが、円卓十二宝剣となる。

最前線の一つにおける、対『王国』との戦力は、ナイトメアの率いる闇騎士団がやや優勢。
この大陸における二大国、『王国』と、ナイトメアの所属する『騎士団諸国家』との競り合い――戦争は長期に渡る領土争いとなっている。
東の『王国』、西の『騎士団諸国家』。
複雑怪奇な政治の論争については、まずはさておこう。
湖畔(こはん)に布陣した王国軍は、ある程度数で押す戦術を取っていた。
戦略としては愚策だろうと、ナイトメアは見積もっていた。作戦を決めるための、戦線の延命作戦。そのために捨て駒にされる敵兵士や生物(クリーチャー)が居るのは戦場の常だが、悲しい話でもあった。
延命作戦については、おおむね軍に議会の一部の識者も同意見だろうともナイトメアは聞いている。
敵国――王国側の、手の込んだ何らかの罠である可能性はいつまでも否定できないのだが、敵を包囲(ほうい)、殲滅(せんめつ)する手段が明らかにあるのに、使わないほうがおかしい。
問題は、捨て駒・捨て石にされたと、現場の王国軍の兵士がどれだけ自覚的になるか、だろう。
窮鼠(きゅうそ)は猫を噛む、という言葉の通りで、そのうちに、負けを悟るであろう敵が凶暴かつ自暴自棄なまでの戦いを開始しだす可能性は十分にありえる。
王国軍の居場所は、湖畔における背水(はいすい)の陣(じん)。
祖国のためにと、文字通り言葉通り、決死の戦いを挑まれれば厄介だ。
(――危険な芽は、詰んでおくか。可及的速やかに(できるだけ速く))
ナイトメアは自らの闇騎士団に、進軍の指示を出した。
配下の全ての騎士団員が、進軍を開始する。ナイトメア自身も、自慢の名馬に跨(またが)って戦線を構築していった。
いざ、自軍が危機に陥(おちい)ったときの撤退行動の対処も、まあ問題はない。
精鋭部隊である闇騎士団の背後には、その何倍もの一般の騎士団たちが居る。
事実を俯瞰(ふかん)して再度確認するために、ナイトメアは独り言を言う。
「向こう岸まで鎧(よろい)を脱いで、泳いで渡るしかないだろう?」
チェックメイト、と。
包囲殲滅戦が開始され、ほとんどナイトメア側の損害はなく、数時間で終わった。
相手が覚悟を決める前に、総崩れの軍隊を叩き潰したのだ。
地獄絵図の死戦場は、記録せずとも良いだろう。

「ナイトメア殿。
エリー湖畔(こはん)における王国軍撃滅(げきめつ)の大任(たいにん)、ご苦労だった」
会議の最初にはこの場の年長であり、白騎士であると共に現・国王のアンスター五世がまず、口を開いた。
白髪の見える壮年の男で、腰には『輝夜剣(こうやけん)、ライジング・サン』が鞘(さや)に納(おさ)まっている。
騎士団諸国家の十二騎士が集結する『円卓議会』は、有事ならば一般の政治家が集まる議会以上の権限を持つ。
戦線の構築、運用。次の相手の動きの読み解きなど、十分に大きな権限を与えられた各騎士も間諜(スパイ)などの情報戦を制し、対立する王国やその他の敵国・仮想敵から諸国家の一団を守ろうとしている。
『諸国家』、という名前だが、事実上はもはや連合国ではなく、一つの大国ある。
昔は対立していたこともある島国がひとまとめになり、大国となったのだが、当時から世界有数の大国だった『王国』は、ごちゃごちゃと離反や一方的な領土の割譲・事実上の侵略だのと騎士団諸国家に文句をつけ、小競り合いから大規模戦まで、今日まで半世紀近い戦争が続いている。
木製の椅子に座り、いつものように背筋を金属質なまでに伸ばした闇騎士も、アンスターに対し頷(うなず)き、丁寧な口調で応じる。
「敵の指を一本一本切り落としていく作業です。
しかし、伝説の多頭竜(ヒドラ)の首のように、また生えてくることでしょう……。
そのときはまた、切り落としてみせますが」
「頼もしいな」
守護(しゅご)騎士、ランド――巨漢の円卓騎士の一人が、その体格と年齢に相応しい重みのある、しかしうるさくはない声を発した。
「先陣を切り開く能力なら、私も負けません。情報戦は正直、譲りますが」
正直者で有名な赤毛の炎(えん)騎士、フレムはやはり正直で素直な感想を述べた。
フレムは、ナイトメアとそう変わらない若者だが、討ち取った敵の兵士や将軍の数はナイトメアとほぼ同数の猛将(もうしょう)だった。ナイトメア同様、最前線で火急の事案が生じた際に、主に奇襲的作戦を敢行する役割の騎士になる。
それぞれの腰には、『守護剣、ヘヴィー・プロテクト』、『炎剣(えんけん)、フレイム・マイスター』の円卓十二宝剣の二振りがやはり存在し、抜かれる時を待つように大人しく納まっている。
今日の円卓議会は、彼ら四人で全員だ。
開催のほとんどが白騎士、アンスター五世による招集だが、戦争の続く現状では当然、応じられない十二騎士の方が多いのだ。
幾つかの戦略的帰結を交換し、用兵・戦略の議題はすぐに四人全員の同意で終わった。
「問題は、内政だな……」
まだ若い、闇と炎の騎士は押し黙り、ランドが口を開く。
「徴兵は限界、ではありませんが、これ以上は財政も含めて危険域、でしょうな」
アンスターの声はさらに重々しさを増していく。
「我々が肝心要(かんじんかなめ)だ。
ここから先、大局を見据(みす)えなければ、我々は王国の軍勢の前に敗北する」
「単純な人口では、王国に分があるのは事実、ですか」
フレムも追従する。
「ナイトメア殿。貴殿には、なにかあるかね?」
国王からの問いに、黒の騎士は、
「フレムにほぼ同意します。
しかし、先に魔法使い同盟(ライブラリアン)と連携し、技術的供与を受けたのは大きく、これから先も連絡を密にし、連携を強化していくべきかと思われます」
魔法使い同盟。正式には、マジック・ライブラリアン。全世界、それこそこの大陸を超えてさえの情報網があるという、魔法を専門とする者たちの集団のことだった。その魔法技術力は凄まじく、この円卓十二宝剣の開発計画も、ライブラリアンの協力なしでは実現し得なかったとされている。
「ふむ。一枚岩ではない組織で、不安さは残るが、あやつらは利用せねばならんな」
アンスターが認め、円卓会議はそれで終わった。
今後はより一層、厳しい盤面の指し手が求められているのだ。
もし指し方を誤れば、騎士団諸国家は、王国やその同盟国の軍隊・連合軍に蹂躙(じゅうりん)され、滅んでしまう。
「それだけは、止めなければならない」
会議が終わった後、ナイトメアはとても小さい声で、しかしはっきりと声に出した。

円卓議会が明けて息つく間もなく、ナイトメアは様々な工夫ある職務に従事していた。名誉ある騎士に相応しい仕事だろう。
ナイトメアには配下の騎士たちとは別に、『忍者(にんじゃ)部隊』と呼ばれる諜報組織(ちょうほうそしき)を独自に持っていた。
ナイトメア自身が知る中で、最も信頼の置けるくノ一――忍者部隊の頭領(とうりょう)と意志と情報の交換をし、新しく指示を出した。
危険地帯での諜報任務――商売人への偽装工作をした上での(実際に商売をやらせるのだ)、現地の経済事情の下調べ、そこから来る新たな戦場の展開図を想定する、
あるいはその場で、傭兵団をやはり偽装かつ本格的に仕立て上げ、内乱の鎮圧作戦などに参加させ、やはり情報を収集する。
状況によっては敵勢力に加担する可能性もあるのだが、良薬に見せかけた、遅効性の猛毒のようなものだろうと、ナイトメアは確信していた。

「最新型の魔導具の開発の進捗を、見て頂きたい」

主に、忍者部隊からコンタクトを取ることに成功した『魔法使い同盟(マジック・ライブラリアン)』の一派が、そのように連絡を寄越(よこ)してきた。
ナイトメアの所属する騎士団諸国家と、ナイトメア自身の活動資金の一部、その多くを提供している研究所・研究施設であり、決して安くはない投資をナイトメアはしていることになる。
いずれ実戦に使うに耐える魔導具、その技術ならば見ておいて損はない。
ナイトメア本人の腰に収まる『暗剣、インビジブル・シェイド』ほどではないだろうが、魔導(魔法と科学といったニュアンスだが、使う人物によって意味合いが異なることもある、まだ曖昧(あいまい)な表現である)技術は日進月歩であることは、常々、把握し直さなければならない。
思考の更新(アップデート)、というべきなのだろう。
『王国』の魔導技術に遅れをとる訳には、絶対にいかぬのだ。
差し出された微糖入りのコーヒーを飲むのもそこそこに、ナイトメアは研究所内で所長にその他の技術者から説明を受ける。
「極めて応用性の高い魔導具になります。
我々はこれを、『マルチプル』と名付けました」
魔導具の見た目は大型の時計のようにも見えなくもない。金属で覆われて重く、頑丈そうだったが、内部には何らかの繊細な魔力装置が内蔵され、稼働・駆動しそうに見えた。
「腕に付けるのか?」
「はい、そうなります。ナイトメア殿」
「時計を腕に取り付けるアイデアなら、分からなくもない。魔導具を装備するのにも、頑丈さがあるのなら実用的だ。
だが、時計ではないのだろう?」
「さすがに、理解が早いですね。
こちらの魔導具は……」
一通り説明を聞いたナイトメアは、好意的な反応を示した。
「大変魅力的な装備だ。でき得るのなら、私の左腕に取り付けたいくらいだ……。
どこか、欠点はあるのか?」
開発班の班長(チーフ)は、種明かしと言わんばかりに口を開く。
「魔力消費量が膨大なのですよね……。
試験運用で何人かが病院に搬送(はんそう)されています。い、いえ!! 後遺症などが残るほどではないのですが……」
ナイトメアは閉口した。
「……安全性を、もう少し確保してからにしてくれ……」

あとがき

けっこう、壮大な雰囲気で始まりました。

細かい設定は、じわじわとにじり寄る形で、詰めていきたいと考えています。

舞台(世界観)設定、

この世界における魔法の細かい設定、魔法学とは? とか、

いきなり数百年後になって、宇宙人(地球外生命体)とファーストコンタクトする話も考えています(ぶっ飛びすぎやろ^^)。

なんというかライフワーク感覚で、半生くらいはかけて書いていきたい小説群が、私のこの、

Spicy World(スパイシー・ワールド』系小説(シリーズ)になります。

作品ごとに、主人公やその彼らが生きる時代が、わりかし変わります(1作、1作を、丁寧に書いていければ幸いですが……)。

なるべくテーマを見つけた上で書いていきたいものの、迷走しだしたらすみません。

そのときは、軌道修正できれば幸いです。

今作、円卓十二宝剣のテーマは、(主人公・闇騎士ナイトメアの)『カリスマって何?といったところかな?

わりと真面目に、書いていきたいと思っています(軌道修正が怖い!!)。

ありがとうございました!!

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