ARMORED CORE(アーマード・コア)

【ARMORED CORE Ⅵ】『Ignore Front』【二次創作小説】

まえがき

どうも、書い人(かいと)です。

今作は冬コミ(コミックマーケット)に参加している有志の集い(サークル。その名も『脳味噌熱暴走』)の同人誌で、出る予定だったAC6二次創作小説です。

本来は3本立てだったのですがページ数の関係上で削る必要になったため、管理組合・運営側に掲載許可を貰った上、公開する運びになりました。

楽しんで頂ければ、幸いです。

Ignore Front(本編)

どうか、無視してください。そう、僕は願っていた。
戦闘用に改造された、二脚式MTのパイロットの傭兵、それが僕だ。
話によると、敵のAC一機が、僕たちの大規模な拠点に向かっているとのことだった。
ことの深刻さは、ド素人の僕にも分かった。敵対組織が差し向けたAC。

パイロットの認証コード、識別名は『レイヴン』。
ワタリガラスという意味だ。

その日はコートを脱いだり着たり、MTに乗ったり降りたりが面倒な一日だった。
僕が働いているのは、大手企業グループ傘下の一社の、大規模拠点。軍事工廠(こうしょう)兼、軍事基地。
新参の企業がここまでようやく来たか、とは見られている程度の活動拠点らしい。他の組織にはそう思われている、というね。
あまりに多くの資本を偏らせすぎだと、友人の又聞きで聞いたことがある程度だけどね。
この地点は、雪原でのコーラル運搬経路を繋ぐ補給路としての役目が大きい。
事情は知らないが、社長はコーラルそのものを油田がごとく掘り当てたいらしい。なんでもそういった採掘地点を、上から割り当てて貰えなかったのが不満だとか。
食料、燃料、向精神薬にもなる万能物質コーラル。
だけど、便利さと危険さは、いつだって表裏一体。
半世紀前には惑星中を焼き払って甚大な被害をもたらした大災害、通称『アイビスの火』が起きている。
それでも懲りない奇特(きとく)な人類は、実は一般人として想定される人たちが想像する以上に、たくさんたくさん居るようだ。
『近くの味方部隊から連絡が来た。可能ならば援軍になってくれるそうだ』
現地指揮官の声に、
「行けたら行くってことじゃん。つまり、来ないってことじゃん」僕はそう毒づいた。
僕たちの部隊には、過去の戦闘で当該ACを捉えた画像、及び解析されたアセンブル――各パーツの組み合わせのデータ――が送られてきている。
喪服のような、武装を含めて全パーツが真っ黒な機影が映っていた。
黒炭のようでもあるが、そうなるのはむしろこちらの方だ――想像したくもない。
過去にこのパイロットが表立って関わり、残っている戦闘履歴(ログ)、及びAIによる機体の解析情報によれば、高速戦闘に特化した軽量二脚。
腕部の武装は、一三〇〇発もの弾薬が入るガトリング・マシンガンにパルスブレード。両肩には、マルチロックオンが可能な垂直発射式・八連ミサイルランチャーがそれぞれ載っている。よく過積載にならないものだ。
他のアセンブルにも目を通すが、分野ではないのでどれくらい凄いのか、凄くないのかもよくわからない。ジェネレーター出力が~とか書かれていても……まあ、僕の乗っているMTと比較すると、悲しいことになりそうだ。
このレイヴンという名のAC乗りは、近接寄りの戦闘スタイルらしい。こんなものに近づいて欲しくはないと正直に思う。死ぬ以外に考えられないし。
機体データと戦闘(コンバット)ログが何の役に立つのかはわからない、役立たせるしか無いので考えておく。

結局、数時間後に現地部隊のみでの応戦となった。友軍による増援は――来なかった。
『全員で殺しにかかれ!! さもなくば――』大きなノイズ。
――俺たちが殺される。そう言いたかったのだろう。
今は副指揮官が自動で現地指揮官に繰り上げになった。悲しきKIA。
元・指揮官は最前線で職務を全うした、のかもしれない。
――アーマード・コア。
ACの動きが全てを物語っていた。
開幕、戦闘開始と同時に八連ミサイルによる二重の掃射。さらに一三〇〇発ガトリング砲を浴びて、こちらのヘリ、飛行ドローンが壊滅的な損害を受けた。
指揮官機だったMTは、パルスブレードで真っ二つに切られ、大破。
元・指揮官が本作線の肝だと踏んだのは、正面装甲が特に分厚い造りの砲台だった。それは実体弾を放つキャノンで、確かに直撃すれば、ACでも損壊は免れない。
……直撃すれば、だけど。
横に居た同僚のMT乗りは、半狂乱になりながら前進し、ミサイルを発射した。
釣られて、僕も心の底から怖くなる。僕の方は、ただ突っ立って死を待つだけ、硬直してしまっていた。なにも出来なかったのだ。
僕らは砲台のある一地点を守る配置についていた。
砲台を破砕するために撃たれたガトリング砲の掃射を受けて、その同僚のMTは破砕、炎上した。
それはただの、流れ弾だった。狙ったわけでもない、ただただ、不運なだけだった。
僕は、被弾した同僚に向かって何度も何度も名前を呼ぶが、返事が一向に来ない。
「……死んだ……?」間の抜けた言葉とともに、冷たく冷え込んだ事実を確認するのには、戦場にしては恐ろしく長い時間を要した。

――今日が、お前たちの命日だ。

レイヴンの戦法は、そう言っているようにしか見えないのだった。
「ぼーっと突っ立ってんじゃねえ! 応戦しろ!!」
苛立ちの声とともに、僕の所属する砲台防衛班の班長がそう言った。
目が冷めた。確実に自分は、ここで死ぬ。
もう助からない。
ならばせめて、あのACに最大限、迷惑をかけてやりたかった。

照準完了。

僕の乗る、MTの両肩部にアセンブルされた、ミサイルランチャーの八×二発、計一六発の一斉発射。
さぞかし鬱陶しい蝿(ハエ)のように、敵ACにまとわりつくはずだろう。
レイヴンは既に、回避機動を高速で取っていた。
それとほぼ同時、僕は右腕に持ったマシンガンをフルオートで発砲、しつつ大型の建築物――高さ二〇メートルをゆうに超える、整備用ガレージの裏に隠れるために、移動する。
隠れる間際、黒い死神が反応。こちら方面に迫って来ているのを、光学カメラの目視で確認。
一瞬の後で、センサー機能を発動させる。ガレージ越しにACの位置が丸見えになる。
死ぬなら、せめて蹴りを入れてやりたかった。
MTのブースターを限界まで使い、ガレージに沿うように来ていた敵ACのコアを、出会い頭になるように計算して、ほぼ真正面から蹴りつけてやる!
衝撃。
敵ACとパイロットのレイヴンとやらが受けた衝撃は、どれくらいなのかはわからない。
即座に、体勢を立て直す敵AC。
――ああ、いよいよ死ぬのだ。
ミサイルか、機銃掃射か、パルスブレードで真っ二つか。
驚くべきことに、相手は何もしなかった。
飛び跳ねるように、垂直にジャンプ。その後ブーストを吹かし、その場を離れていく。
……なんでだ?
「敵AC、離脱。
弾切れのようです」
防衛部隊、生き残りの隊員がそう、口にした。
だけど、まだパルスブレードがあったはずだ。僕一人くらい、難なくやれたはずだ。
心のどこかで無視していた、金属のひしゃげる音が激しくなっていく。
「あ、」
それは実に間抜けな、自分自身の声だった。
戦闘の余波によって破損し、ポッキリと簡素な鉄骨が折れて、ガレージの一部が倒壊していく。
逃れられず、僕のMTは金属の棺桶に早変わり。
「ふざけ――」
圧死する。
敵AC――レイヴンは、僕を無視した。
違う、最初から敵だとすら思っていなかった。

僕はそうして、花火になった。
血や肉、その他の体液が混ざった、汚い花火だ。

気が付くと僕は、全身を包帯に巻かれ、硬いベッドに寝かされていた。
天国にこんな激痛があるとは思えない。
地獄かあるいは生き地獄――つまりは現実の類(たぐい)だろう。
「君には選択肢がある。このまま黙って廃棄されるか、『はい』と答えて生きながらえるかだ」
直後に「はい」、と口にしていた。
死にたくはない。正直、こんな激痛を抱えて生きるのもごめんだけど。
全身が痛すぎて、上手く考えられない。
「検体、確保だ」
僕を保護した存在――白衣の男は、そう笑った。
「さて、君は何になりたい?
コーラルの被検体か、再生医療のマウスの代わりか、それとも――」
「ACだ」僕は、自分でも驚くくらいにはっきりとした声で、確かにそう言った。
「AC? ふーむ」
演技かもしれないが、男は困ったような顔をしてみせた。
「力が欲しい。
あんな屈辱はもう、二度と味わいたくない……次は負けない――ACにさえ乗れれば」
「強化人間への適性があるならな。
まあ、手術してから適性があったのかを確認するでも、悪くはない」
白衣の男はそう言い、また笑った。

戦場において、アーマード・コアは絶対に無視できない、されない存在だ。
いつ、僕に終わりが訪れるかは、わからない。
だけど、僕は最期の日まで、花火を上げ続けることだろう。
機体名と、パイロット認証コードはすぐに思いついた。

ファイヤーワークス、ラストレイヴン。

あとがき

実は、まだ3週目の途中であることを白状します。

ゆっくりと味わいたいんや……。

コミケ(同人誌)の方のss(ショートストーリー、ショートショート)では、あの有名なインビジブルインビンシブル・ラミー様の伝説と、将来有望なテスター・パイロットの希望に満ちた日々を描きました。

楽しんで頂ければ、幸いです。

ありがとうございました!!

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